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トーンアームとターンテーブル6 プレーヤーについてpart2 中川 伸

さて、ここでは主にダイレクトドライブ(以下DD)の話です。最初に使ったDDはデノンのDP-1000が出た直後の1975年でした。原理からすれば、スリップをしながら回るエディカレントモーターなので、回転の質はなかなか良いのです。でもトルクが弱く、これ自体は問題無いのですが、デノンは、スタートが遅いのを嫌ってターンテーブルを軽くしました。買って1ヵ月ぐらいは低音のアタック音が弱くて違和感を持ちましたが、1ヵ月程で、慣れてしまいました。油断できない話です。ちなみに直前は日本フォノモーターのT-500といいうベルトドライブでした。

やはり1975年頃にソニーのPS-8750が発売され、このクリスタルロックを知って、DP-1000に位相制御を加え(ラジオ技術1975年9月号に掲載)、イナーシャを大きくするために重量のあるターンテーブルシートが使えるよう、ターンテーブルの段差も削りました。これによって、そこそこ満足していたのですが、その後の1976年にガラードの401を買おうと6万円を持って秋葉原へ行きました。ちょうどその頃にテクニクスのSP-20が発売され、それをたまたま見て、触って位相制御の動きが良さそうに思え、SP-20の方を買いました。位相制御は、指先で軽くブレーキをかけてもストロボ位置が少しずれるだけで流れません。帰りに何らかの用が有って、江川三郎氏の所へ寄ったら、「へー、あなたでもそんなのを買ったんだ!」と笑われました。その意味を実感したのが約半年後だったのは恥ずかしい思い出です。

慣性モーメントが増えた良さは確かにあったのですが、高域がどうしてもカン高くなりました。この手のDC型DDはパルス駆動とコッキングのせいです。しかし、回転モーメントが大きいと低音の押し出し感が強いことには気付きました。そこで1977年に直径が、40センチのマイクロのDD-100 に変えました。これは、クオーツロックのオンオフが可能で、音の違いはすぐにわかりましたが、どちらが良いかについては、どうもオフの方が良さそうに思えてきました。つまり速度制御に加えて位相制御を加えるか否かです。

これは少し難しい話になりますが、頭で考えれば位相制御の方が良いように思えます。私もそうでした。ところがずっと音楽を聴いていると、緩んだ表現が緩くなりにくいということが分かってきました。音楽は緩急つまり緊張か、リラックスかはとても大切です。オーディオマニアは、とかく攻撃的で派手な方を好みやすいですが、私にとっては究極のリラックス感や憂いや翳りもこれまた重要です。

速度制御はたくさんかけても問題は無いのですが、位相制御は掛けすぎてはいけないということを理論的にはうすうす感じていたのです。この頃、VICTORはQL-7Rを1977年に技術誌で発表し、シミュレーションを使って位相制御の適量について書いていたので、印象に残っております。多くかけるとオーバーシュートやリンギングが出るという事です。言い換えればゆっくりと少量にしなければ副作用が出るということですが、市場の製品の多くが掛け過ぎているように思います。

本来、ゴロゴロとしか回らないものに制御をしっかり掛けてもスーッとは回らないのです。これを理解するには非線形制御や時定数やループゲインやPID制御などの専門知識が必要となります。最も優れた円運動は、天体の動きのように摩擦がないところを惰性で回るもので、何万年、何億年年と滑らかに回り続けます。要するに惰性に任せる以上に優れた回転は無いのです。これがきっかけで前述の40cmの30kgに続くのですが、この時はマイクロのRX-5000用の軸受を使いました。

サブ機としてRX-3000も使い、いろんなモーターをテストしました。この頃にTEACのテープレコーダーのキャプスタンドライブ用の4極(1500回転)と8極(750回転)が切り替えられるシンクロナスモーターを8極で使い、なかなか良い結果が出ていました。このモーターはその後に余り物の放出品を多く見つけたので、先ずは数台を作ってみたら熱心な2軒のお店でRY-5500の置き換え用として評判になり、30台程が売れました。スタート時は100Vですが、定速に入ると60Vに下げられるようにしていました。このように優れたヒステリシスシンクロナスモーターはアルニコ磁石を使うので、当時でも希少品でしたが今ではメーカーも見当たりません。

この頃にOTTOのTP-L3も使いました。これは江川三郎氏が資料を見て興味を持ち、現物を取り寄せ、聴いたところ、とても良かったというものです。購入をためらうような価格ではなかったので、私もすぐに買いました。音を出した途端に、今までにない透き通った音がしたのには驚きました。調べると、三相交流を使った、とても理にかなった設計でした。そしてレコード1回転で120極相当なので、これまでにない程の細やかさで、円運動に近づいたと言えます。シンクロナスモーターだと、50Hzで90極相当、60Hzで108極相当なので、このモーター構造を考えた人は間違いなく天才です。

もう1人の天才はマグネフロートを考えた人です。軸受の摩擦と摩耗の重要性を1965年頃には既に気付き、磁力で浮かせたのです。しかも意図的にネジで軽く接触させていて、これを緩めて本当に浮かすと低音が甘く不明瞭になります。この人、レコードスタビライザーも考えて同時期に特許出願をしていました。いずれもが凄い先進性です。TEICと云うブランドでしたが、1字違いのTEACに吸収されました。

大きく重く豪華なものは誰しもが良さそうに思います。また、そんなのを設計するのは簡単ですし、材料費も特に高価な訳ではありません。しかし、音を良くするにはバランスのとれた設計と理にかなった工夫こそが実は大切なのです。何万年もか掛かって進化した動物はみんなそれなりにバランスが取れているものです。チーターの頭をライオンの頭に変えてもバランスを欠くので狩の成功率は落ちるでしょう。

インシュレーターを硬質にするのか、それともクッション性を持たせるかは両方あります。理論的には台がしっかりしていれば、それにしっかりと寄り添うのが良いし、床が揺れ易い場合はふわっとさせた方が良いというのが基本的な理屈です。でも実際にはやってみて決めます。私の経験では、硬いものを選ぶことの方が多いですが、必ずしもそうではないこともあります。これはハウリングマージンと関係があるように思っています。ですから、実際には現場でやってみるしかないと思います。クッションを硬くするには、別な硬いもの3個を足として使い、元のゴム足は宙ぶらりんにする感じで良いかと思います。私はステンレス製の大きな袋ナットを使うことが多いです。

実は、以前に発表していたプレーヤーがいよいよ完成しそうです。もっと早くに販売すべきでしたが、色んなモーターをテストしていて、しかも高い目標を掲げていたため、遅延していました。その間に写真のようなコアレスのシンクロナスモーターを独自開発していました。14層のプリント基板を使って14ターンのコイルを8個円形に並べたものです。上のコイルと下のコイルは22.5度のスキューとコアレス構造にしたこともあって、もちろん性能は上がりましたが、私の期待までには至りませんでした。

そこで考えたのが、モーターとターンテーブルの間の連結機構に工夫をこらし、市販のモーターでも選べば上手く行きそうになりました。この特許出願が終わり次第、製品化へと進めます。機種はベーシックな2速タイプがベルトを33回転と45回転にレバーで移動させ、微調整は無しの2スピードです。一方、上級機の3速タイプは、レバーでベルトを移動させることで78回転が加わり、微調整も可能です。ステートバリアブル型による正確な90度差の低歪み発振器で駆動をし、別電源になります。モーターは同じなので、後から上級機への改変も対応予定です。左後方にはロングアームも増設可能です。価格はガラスシートとアームとダストカバー(SL-1200シリーズ用が使える)は別売で2速タイプが約300,000円、3速タイプは約500,000円を目標にしております。詳細が決まり次第、発表させて頂きますので、よろしくお願いいたします。(2021年9月29日)

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