
インサイドフォースは、論より証拠!その2 |
中川 伸 |
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そもそもインサイドフォースキャンセラーを初めて搭載したのは精密天秤を作っていた SME社で、オーディオマニアでもあった社長はトーンアームを高感度なナイフエッジにてトーンアーム(3009と3012)を作りました。その後に軽針圧競争になり、インサイドフォースによる左右の針圧差を無くせば、さらなる軽針圧化が可能と考えました。そこでアームを外側に引くことによってカンチレバーを真っ直ぐになるようインサイドフォースキャンセラーを付けました。これによってトレース能力は向上しました。ここでの注意点はあくまでもカンチレバーを左右に曲げない事です。これこそがインサイドフォースキャンセラーの出発点で、理にもかなっています。また、オルソニックから販売されていたサイドフォースチェッカーも針の曲がり具合を表示する構造になっておりました。先ずはこれらこそが正しい考えです。
インサイドフォースを示す図はいろんなところで書かれていますが、実は殆どが間違っております。正しい図はカンチレバーが関節のようになっていて、そこにバネ性が存在していることの重要性を見落としているためです。すると正しい答えには到達できません。針先とアームの支点の2点だけで、それが剛体かのような図になっているものばかりです。
そしてレコードの内側の溝が押す力と、外側の溝が押す力の差がインサイドフォースだと思っている人が殆どですが、実は似てはいるもの明らかに異なるモノです。あくまでもバネ性を持ったカンチレバーを真直ぐにさせるのが本来の正しいインサイドフォースキャンセラーの目的です。計算によるレコードの圧力差ではなくあくまでもカンチレバーの曲がり具合です。
offset tonearm ←クリックでフォルテピアノ相当の繰り返し動画で摩擦の変動を微分化した形なので現実とも同じです。
pure straight tonearm ←クリックでフォルテピアノ相当の繰り返し動画 アームの支点を良く見ると、誤差分で微かに動いているのが見えます。
さて、当社の0サイドフォースはトラッキングエラーが0のところでは、もちろんインサイドフォースもアウトサイドフォースも発生しない事は合っているのですが、この先に多くの間違いが出てきます。内周ではインサイドフォースが出て、外側ではアウトサイドフォースが出ると考える人がいます。これは溝の力はそうですが、カンチレバーを曲げる真のインサイドフォースはどこでも0になります。と云うのは、もしもカンチレバーに横向きの力が加わればアームに伝わり、アームが水平に動いて逃げるので、真のインサイドフォースを発生させることはできないのです。つまりカンチレバーを曲げることはできないのです。内周ではインサイドフォースが発生し、外周ではアウトサイドフォースに見えるのは、レコードの外壁と内壁の圧力差で、角度が曲がるので、カンチレバーに加わる正しい横からのサイドフォースにはなってないのです。これ、かなり難しい落とし穴のかの様になっています。トーンアームをここまで理解してる人は実は非常に少ないです。
更に、レコードに摩擦が無ければサイドフォースは発生しません。また、レコードの摩擦係数はピアニシモとフォルテシモでは異なり、私の実験ではピアニシモで針圧の20%位、フォルテッシモで70%位でした。つまり針圧の50%位が変動しているのです。この変動についても殆ど触れておりませんが、前回で行っているように、論より証拠で、推論よりも実験の方が確実に正しいです。

それからトラッキングエラーのことを角度から計算し、左右の溝の時間差を問題視する人はいますが、その通りです。そういう人は音楽を聴くときは頭を動かさないのだと思います。あるいは聴かないのかも?、、。レコードがガラスやアクリルのような硬い材料でできていれば凹みませんが、塩化ビニールに針圧をかけると単位面席あたりの荷重は多いので、変形しながら回ります。1970年頃だったと思いますが、東芝の中央研究所の所長であった厨川守氏が、レコードは何グラムまでが弾性変形で塑性変形との臨界点を調べました。もちろん東芝のことですから、電子顕微鏡を使ったと思います。その結論は針圧2.5gでした。それ以下だと戻るのですが、それ以上だと戻ってこないので変形したままだとのことです。でもこの結果は発表されませんでした。理由は当時クリスタルやセラミックのカートリジーも使われていて7g位は普通でした。また4gのものもあったので世間への影響を配慮したようです。2.5gは変形はするものの、時間が経てば戻るそうです。それ以上だと戻らないとことが分かったのです。それから私は針圧0.8グラムから1.2gのカートリッジ(デノンのDL-1000やYAMAHAのMC-1000)を持っていたので、それを使って最適な針圧も調べました。
1gは大丈夫ですが、0.8gになるとスクラッチノイズが増え始めます。もちろんきれいに掃除をすれば良いのですが、1gにすると収まります。つまり、わずかな埃でもピチパチと音が出始めるのが0.8gです。軽すぎると塵を跳ね飛ばせなくなると解釈しました。以上からして私は適正針圧は1gから2.5gだと思っております。それでは4gのカートリッジじゃダメなのかと言えば、それでも良い音が出ている例はいっぱい知っています。ただ、それでばかり掛けていれば問題はないのですが、後で軽針圧のカートリッジを使ったときに、その変形が分かります。1972年頃にスタックス社へ愛聴盤を持って行って針圧1gのCP-Xを聴かせて貰った時に、ある種の歪みを感じました。当時の林 直武社長にその感想を伝えると、氏は黙って、そこで使っている試聴用レコードを掛けました。すると全く美しい音が出ました。あれ!と思って家に帰って針圧1.8gのFR-1 MK2で掛けると何の問題も生じませんでした。つまり4gでかけ続けていれば問題は無いのですが、軽針圧のに変えると盤の痛みが聞こえ出すという現象は有り得るというのが私の率直な感想です。重針圧で掛けていた人は軽針圧に戻りにくい理由と関係していると思いました。
ある時期にNTTの研究所から光り関係(光子部)の開発依頼が何件か有りました。その時に聞いた話ですが、研究は理論に強い人と、実験の上手い人がチームを組んで行うらしいです。その時、私は後者かな?と思いました。物理は理解しているのですが、計算はミスもするので確信は持てず、そのため実験とシミュレーターは得意になりました。そういう事も有っての「論より証拠」です。でも机上の空論を言いたい人も多いです。ストラディバリウスやガルネリウスやアマティーも、名匠による豊富な経験からで、計算はしていないと思います。前の2つは割と多く聴いているのですが、アマティーは三軒茶屋付近の小さなホールで30年ほど前に聴いたことが有りました。(2026年6月27日)
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