AH-120K > 使用方法 > よくある質問 > ご購入者の声 > 関連リンク > 購入方法
技術情報一覧 < オーディオ用に最適な3端子レギュレーターを作りました
オーディオ用に最適な3端子レギュレーターを作りました 中川 伸

 追伸です! 3端子レギュレーターがようやく余分にできてきましたので販売できることになりました。電源電圧は正負とも3.3V,5V.12V,15Vが標準ですが、その他の電圧、たとえば24Vといった電圧も調整可能です。価格は送料税込みで一律1個3000円です。ヒートシンクへの取り付け方向を同じにすればピン配列は互換性があります。注意点は電流制限が音質重視と安全策から1Aの即断ヒユーズだという点です。出力側に異常に大きなコンデンサー容量が入っている回路の場合、まれに切れる可能性もあります。もしも切れた場合はスローブローヒユーズを用意していますのでご連絡下さい。
 普通の3端子レギュレーターで正常動作していることを確認後に、本レギュレーターを注意深く入れ替えてください。電圧精度は6%で、最低ロス電圧はロードロップタイプと同等です。使用電流は放熱条件によりますが、0.005〜0.8A程度とお考え下さい。入力電圧から出力電圧を引いたロス電圧と、流れる電流を掛けたワット数が発熱の原因になり、どれだけ内部素子が発熱するかは本レギュレーターの熱抵抗とヒートシンクの熱抵抗の和にワット数を掛けた値で決まることは理解して使用してください。
 具体的には入力電圧20V、出力電圧15Vならロス電圧は差の5Vです。ここに0.5Aが流れているなら2.5Wが発熱の原因になります。本レギュレーターの熱抵抗は12.5℃/Wなので無限大の放熱器の場合、この2.5倍の31.25℃ほどが周囲温度から上がります。つまり周囲温度25℃なら内部は56.25℃になります。裸の場合の熱抵抗は約80℃/Wなので200℃も上がってしまうので周囲温度25℃なら225℃になるので150度の規格をオーバーして壊れてしまいます。必要な熱抵抗を持った大きさのヒートシンクが必要という訳です。実際には寿命の関係で100℃付近に抑えますが、すると20℃/W以下のヒートシンクをつけなくてはなりません。すると、25℃の時、ヒートシンクは75℃で、内部は106.25℃になる計算です。少なくともこの程度の理解は必要です。内部には発振防止のコンデンサーが入っていますが、新たに製作する場合は音質的な観点から10uF程度のオーディオ用電解コンデンサーを出力に使用することを推奨いたします。当然ながら、くれぐれも自己責任にてお使い下さい。振込先は 三井住友銀行 清瀬支店 普通口座 3064084 有限会社フィデリックスです。入金確認後にメール便にて発送させていただきます。


 3端子レギュレーターはとにかく便利です。そのためいろんなところでよく使われています。しかし高級オーディオ用に使うとなると、実は色々と問題があります。1977年頃のことですが、ある大型のスピーカーシステムでは2チャンネルのマルチアンプで駆動をすることを推奨していました。そのシステムと専用デバイダーを使っているある音楽家が、これをもっと良くしてはくれないか?と、すごいシビアな要求を私にしてきました。
 不満の原因を丹念に調べて行くと、そのデバイダーに使われていた3端子レギュレーターにあったのです。これを教訓として、当社のプリアンプの開発には3端子レギュレーターを使わず設計したのがLZ-12という訳です。これは超ローノイズを実現可能にするFETのQポイントを使い、しかも非常にインピーダンスを低くした設計です。これを12個使ったのでLZ-12になりました。その音楽家はアメリカ製のとっても有名なプリアンプを使っていたのですが、LZ-12の試作品を聴くやいなや即注文ということになり、LZ-12の1号機を買ってくれました。なお、LZはLow Impedanceの意味を込めたものです(工学ではImpedanceのことをZとして表します)。
 最近、超低ジッターの水晶発振器を作りましたが、3端子レギュレーターはノイズが非常に多いので、こんなものを使われたのでは十分な性能を発揮できるのかが疑問になりました。そこで、とうとう電源までも作ってしまいました。ノイズは一般的な3端子レギュレーターである7815に比べると30dBも少なくなりました。そのためこれをLZN7815と命名し、ローインピーダンスとローノイズの2つの意味を込めました。プラス電源である78**シリーズの電圧は15V、12V、5V、3.3Vで、マイナス電源の79**シリーズは-15V、-12V、-5Vを予定しています。

  サイズですが、7815のTO-220と互換性を持たせるようにしました。オーディオ用として重要な過度応答ですが、7815は0.1Aと1Aの負荷電流を1kHzでスイッチングさせると、写真左の様に大きなオーバーシュートとアンダーシュートが出てきます。つまり、泥縄式の遅い修正ですから、音楽信号にはとても追いついてはいないのが実態です。定電圧電源という名前ほどには定電圧になっていないことが分かります。写真右はLZN7815で、オーバーシュートとアンダーシュートは全く出ていません(電子負荷は富士通テレコムネットワークス製EUL-300αXLで、いずれも50mV/Divと200μS/Divのオシロ画面です)。写真のようなオーバーシュートとアンダーシュートがもしも電源にあるなら、音が騒々しくなることは容易に想像できるかと思います。以上からして分かるように、オーディオ用定電圧電源の過度応答は大切ですが。必ずしも調べていたり、対策をしているわけではありません。
電源は非常に重要ですが、AC100Vを安定化したり、ど太い電源ケーブルや、大きくて重いトランスを使うのは電源電圧を安定化したいという思いからに他なりません。けれども、アンプ類が電流変動をしている元凶ですから、ここに最も近いところで電圧変動しないようにすることこそが直接的です。ということはAC100Vを安定化したり、ど太い電源ケーブルや、大きくて重いトランスを使うのは、靴を隔てて痒いところを掻くことに似ていませんか?

  ノイズ特性ですが、IHF Aカーブで測定をすると一般的な3端子レギュレーターは-94dBV(20μV)で、LZN7815は-124dBV(0.6μV)ですから、30dBも下がったことになります。あまりにも小さくなったので、普通の測定器では上手く測れず、図のように40dB増幅して計りました。こんなに少なくなれば、なんとも静かで澄んだ音が出そうに思えるではありませんか。
ちなみに電源出力のコンデンサーは発振止めで、7815の指定は0.1uFです。インピーダンスは低い場所なので10uF程度はノイズや応答に何ら影響ありません。
オーディオ機器に使われている3端子レギュレーターを見つけ次第、順次これに交換してゆけば、いろんな発見があるかも知れません。近日中に発売いたしますが、大きな数量は期待できないので、予定価格は1個2000円台後半になりそうです。進展がありましたなら、このページで追伸として書き加えることに致します。(2010年1月12日)

Copyright FIDELIX  フィデリックス  info@fidelix.jp