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電源アースと電源ノイズと音質の話 その2 中川 伸

 電源ノイズは、発生側による電磁妨害(EMI)の量と、電源ノイズを受ける側の電磁感受性(EMS)と、それらの相互関係からなる電磁両立性(EMC)によって決まります。こういった概念は非常に重要です。30MHz以上の電源ノイズは、直接的に空中へ電磁波となって放出されるのが支配的で、これは放射ノイズ(radiation noise)といいます。放射ノイズはアンテナとスペクトラムアナライザを使って30MHzから1GHzまでを計ります。30MHz以下は電線を伝わるのが支配的で、こちらは伝導ノイズ(conduction noise)といいます。伝導ノイズにはノーマルモードノイズとコモンモードノイズがありますが、厄介なのは後者です。
 前者はLCフィルターなどで比較的簡単に落とせますが、後者は簡単ではありません。というのはインダクタ類を入れても並列容量が出来てしまい、大きな容量のYコンデンサは感電するので使えませんし、グランドを取ろうとしても線にインダクタが出来てしまったり、逆にアンテナのような働きをしたりで簡単には落とせないのです。その厄介なコモンモードノイズを測定するための基準になるのが擬似電源回路網(LISNまたはAMN)で、資料は以下のサイトにあります。
http://www.kyoritsudenshi.co.jp/3products/3pdf/p037_knw242f.pdf
http://www.kyoritsudenshi.co.jp/3products/3pdf/p041_knw407f408f.pdf
 スイッチング電源のノイズ規格には、9kHzから30MHzと、150kHzから30MHzがありますが、オーディオ用としての検討をするには9kHzから30MHzのLISNを使うのが望ましいでしょう。というのは150kHz以下に基本周波数を設定することで、それが大きかったとしても、ノイズ規格からすればローノイズな電源になりますが、実際にオーディオ用として使うには多いに疑問が残ります。最も一般的なCISPR規格は2006年に若干改定され、私の使っている擬似電源回路網はメーカーにて最新型に改修されたKNW-242Fです。外形写真と内部写真からも分かるように大きな空芯コイルが使われています。

 オーディオの人たちは電源ノイズについて書いたりしてもいますが、必ずしも合っている訳ではありません。そもそも電源ノイズを計ったことのある人は少ないと思います。ノーマルモードノイズの対策と、コモンモードノイズの対策をごっちゃにしたりとかです。それにスイッチング電源やインバーター機器が普及する前と、現在では電源環境が違いすぎるので、古い経験で得たノイズ対策が現在の状況には必ずしも当てはまる訳でもありません。例えば電源トランスの巻き方についても、私は昔ならレギュレーション重視で出来るだけ結合の良いものを使っていたのですが、今では、なるべく静電容量の少ないものを使うようにしていて、その方が良い結果が出易いと感じています。
 さて、ノーマルモードノイズは理屈に近い振る舞いをするので、推論しやすいのですが、コモンモードノイズは意外な振る舞いをします。そもそも2次側は何処にも繋がってなくて浮いているにも関わらず、なぜ出るのだろうと、私も最初は面食らいました。SERENITY電源の開発でノイズを徹底的に追い込む経験を積んだので、この厄介なコモンモードノイズが見えるようになってきました。
 昔だとグランドに落とすというノイズ対策もあったのですが、現在ではノイズの周波数はグッと上がっているので、そのようなインピーダンス下げることで、電流を流す手法では効果的にノイズを下げられないことが多くなってきました。電流を流す対策だと、電流が流れる1周における全影響を考えなくてはなりませんが、装置の数が2〜3台とか少なければ考えられても、5台とかが組み合わさると、もう考えられません。電流が流れるルートにインダクタンスが出来てしまうと、そこで電圧として発生し、それが信号として入り込みます。ですから現在ではそもそも電流を流さないノイズ対策が主流で、その為には以下のようなものを使います。
 アイソレーショントランス、パルストランス、デジタルアイソレー ター、フォトアイソレータ、インダクター、コモンモードチョーク、フェライトビーズ、クランプフィルターなどで、いずれもがインピーダンスを上げることで電流そのものを流れにくくする手法です。バッテリーが良い 結果を出しやすいのはノイズ電流のループができないからです。ということで以上のようなものを使ったとしても、全ての機器をグランドに繋げば、せっかくの努力が無駄になることは容易に分かります。ですから私は3線式の電源コードを使うオーディオ機器は今まで作っていませんし、どうしても使わざるを得なくなれば以下のアースインダクタを使うと思います。
http://www.nec-tokin.com/guide/ac/ac-sng-j.pdf
 因みにアースは英国で、グランドは米国で主に使われているそうです。アースは地球に接地、グランドはフレームグランドといった仮想のものという解釈もありますが、用語としては区別無く使われているようです。私がオーディオでアース線を繋ぐのは、ハム音防止のためのトーンアームアースくらいです。超低ノイズや超低ひずみの測定時でも測定器のアースを外した方が良いデータが取れること多いです。
 そういった経験からコモンモードチョーク、フェライトビーズ、LCフィルターを使って生まれたのが、HIFI USB NOISE FILTERで、大変に好評です。同時にフィデリックス製ACアダプターも好評なのは、出力ノイズが0.6μVやオーバーシュートの無い過度応答のみならず、静電容量を35pFと少なくしたことが多いに関係していることと思います。ACアダプターについても想定外の反響に当初は驚きましたが、今では外注さんにお願いしているので納品はスムースです。

 私は電子情報通信学会の会員で、エネルギーエレクトロニクス部会(主にスイッチング電源の研究)に所属していますが、そこで上の写真のセレニティ電源のノイズデータを示し、「ここまでノイズを少なくして、オーディオ用に最適なスイッチング電源を作りました。」と説明しますと、「こんな高い周波数は音として聞こえないのでは?」との質問を受けます。私は「もちろん聞こえないのですが、それでもこういったノイズは音を悪くする能力を確実に持っています。」と答えます。すると「はー、そういうものなのですね。」となります。
 ノイズデータの説明ですが、下の写真左は電源を接続しない状態なので、測定系の残留ノイズです。下の写真右はフィデリックス(FIDELIX)製6WクラスのACアダプター12V0.55A時のノイズです。CERENATEの電源ノイズはフィデリックス(FIDELIX)製6WクラスのACアダプターのノイズに近い少なさですが、低い方のレベルが下のデータに比べて上がっているのは、このとき使ったLISNが150kHzから30MHzのタイプだったかからだと思います。スペクトラムアナライザはいずれもADVANTESTのR3361Bで、グラフのスケールは全て同じです。

 下の4つの写真は、いずれも12V2AのHDD用の電源を0.55Aで測定したものなので、定格時よりは少なくなっていると思います。スイッチングノイズは目立ちますが、それでも定格時でCISPR規格には入ってそうです。それから、スイッチング電源は1次と2次のストレーキャパシタンスが2000pF位は普通にあります。

 FIDELIX製ACアダプターの使用実績例
3.3V XMOS
5V  ElectArtのUDA、SDTrans384、babyface、DS-DAC-10、Dragonfly、CuBox
6V  Styleaudio
9V  highFace EVO、BusPower-Pro、QA550、JAVS X-DDC plus、UDT-1、DAC-2MARCH、DAC-2USB、izmo M1-z
12V  V-DAC、LXA-OT1、MR-1000、外付けSSD用外部電源
15V  アナログ機器
±15V MARK LEVINSONのJC-2プリアンプ用
その他 ミューシックバードのチューナー用
     アナログプレーヤー用
     headphoneAMP用

 電源単体では6W(13,800円)クラスと、12Wクラス(27,800円)があり、電圧は3.3V、5V、6V、9V、12V、15V、24Vが標準ですが、その他の電圧もなるべくご要望には答えられるようにとは考えています。12Wクラスはシルバーとブラックがありますので色指定をお願い致します。いずれも口金形状、もしくは、使用したい機器名を教えていただければ適合できる可能性はあります。連絡先はTel & Fax 042-493-7082 Mail:info@fidelix.jp なお、上記の金額は全て送料込みで送金先 三井住友銀行清瀬支店普通口座3064084 有限会社フィデリックスです。では、よろしくお願い致します。(2013年6月22日)

    
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