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JFETのIdssを測定する 中川 伸

 

 私はJFETの音が好きですが、実は他にも同様なオーディオ技術者は結構いるものです。しかし、JFETはIdssのバラつきが多くてランク分けが必要な場所も残念ながら有ります。普通のトランジスタもHfeなどはバラつくのですが、これらは回路技術で吸収しやすいのです。以上の事情から、普通の企業では使いたくても使い難いのがJFETという訳です。ましてや2SJ74の様な廃品種を使う設計なんて困難です。こういったことからJFETの品種が少なくなったのも頷けます。
 新製品のフォノイコライザーLEGGIEROの増幅回路はオールJFETで、在庫も持っているので、こういった廃品種が使えています。Idssのバラツキを把握しておきたかったので、第一ロット(100台)用の数千個は自分でランク分けしました。写真はPchでHigmの2SJ74と2SJ104で約700個分の写真です。両者のチップは同じものですが、前者はノイズ選別品で、後者は無選別品です。
 ノイズ選別といえば、良いものを選ぶかのように聞こえるかもしれませんが、実際には稀にある悪い物を排除しているのが実態です。ポップコーンノイズを調べるには、10秒程度の時間がかかるので、半導体メーカーはノイズ選別をとにかく嫌がります。つまり、2SJ104の中には2SJ74相当品が沢山含まれているというのが現実です。でもノイズ不良品はLEGGIEROの最終検査で必ず排除されます。因みに2SJ104のスモールパッケージ品は2SJ107で、2SK170の無選別品が2SK364で、そのスモールパッケージ品は2SK366です。
 さて、Idssの測定方法ですが、ここではDC9ボルトのACアダプターと0.2Aのポリスイッチと電流計と8PのICソケットを直列に接続しています。ソケットの1,2番ピンは-で、3,4番ピンが+です。Nch測定時は1番がソース、2番がゲート、3番をドレインとし、Pch測定時は2番がドレイン、3番がゲート、4番をソースに接続します。測定時の注意は接触不良にならないよう、少しの力を加えて傾けるのがコツです。足の間隔が狭い場合は2番ピンや3番ピンにゲートとソースの2本を入れたりします。Idssをランク分けするのはペア特性を取る場合が多いのですが、LEGGIEROではパラ使用やコンプリメンタリティー使用の場合には相手との合計値が一定になるような使い方もしてもいます。
 さてPchの重要性ですが、私は1969年にソニーのTA-1120Fの開発に携わりましたが、その時、初代TA-1120の開発に携わった先輩から聞いた話です。試作品を大賀典雄氏がテストをしていて、とても快調だったので、すっかり気を良くし、ビールでも飲もうかと冷蔵庫を開けたら、パチッと音がしたので、「何だこれは!こんなもの無くせ!」ということになったそうです。ノイズ防止コンデンサーを外した扇風機でパチパチやりながら、色々と研究をした結果、初段で検波されるというちゃんとした理屈によってノイズを拾い、ちゃんとした対策をすると治るのですが、残念ながら、音はどれだけか犠牲になってしまいます。TA-1120Fも対策をさせられ、残念ながら、いくらか音が犠牲になりました。
 

 しかし、LEGGIEROのようにNchとPchの対称回路にすると、検波され難いので特別な対策をしなくとも外来ノイズにめっぽう強くなります。音が犠牲にならないのは貴重なメリットです。
 さらにLPの録音はある時期からRIAAに統一されたことになっていますが、ソ連や東欧のものは割と遅くまで統一されずにNABに近いものだったそうです。そういう意味からも、RIAA以外のイコライザーカーブが使えるLEGGIEROは、録音意図の正確な鑑賞のみならず、LPレコードのデジタル化用にも大いに役立つものと思います。ちなみに、統一されたRIAAカーブは、歩み寄り易いよう、色々有ったカーブの平均に近いものになっています。33と1/3回転というスピードも50Hz地域と60Hz地域のどちらでもストロボスコープでピッタリ合わせられる回転数が選ばれています。
 入力インピーダンスを1ギガオームにすると、バルクハウゼン効果を抑制し、鉄芯MCでも空芯MCのような空間に漂う繊細な響きまでをも再現します。これは-156dBVの超低雑音との相乗効果もあってのことです。電源の工夫としては増幅回路の各段で音声電流は電源に流れない回路構成になっていますので、電源を通じての段間の干渉が無いので、明快な低音が再生されます。左と右のアースも完全に切り離すことで広大な音場が得られます。これらについては、別な機会に詳細に説明する予定です。
 LEGGIEROの試聴記事がアナログ誌の46号に掲載されました。予約頂いている内の20台分は年内にギリギリ出荷ができそうです。次の出荷は1月20日頃になりそうです。(2014年12月23日)

    
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