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お薦めしたい本 中川 伸

 米国のアナログデバイセス社で出版している英語版を日本語に訳したOPアンプ大全です。写真右は私が尊敬する最高の回路技術者の一人でロバート・ワイドラー氏の写真です。

 この出版経緯ですが、専門書の翻訳はいくら語学が達者でも、専門知識が無いと上手く訳せません。そこで、CQ出版が主催している電子回路技術研究会のメンバー達で分担し合って翻訳することになりました。私はこの会に所属していますし、翻訳の一部を担当いたしました。
 メンバーは主にトランジスタ技術やインターフェースのライター達で、それぞれの専門家で構成されています。数十GHzのフィルターの設計者、GPSに詳しいカーナビ設計者、SS通信の専門家、水晶メーカーの設計者、マイコンやFPGAのプログラムの達人、超音波機器の専門家、あらゆるセンサーを駆使し資源開発するベテラン、スイッチング電源のベテランなどと優秀なメンバー達がいっぱい揃っております。測定器メーカーや半導体メーカーなどの最先端の人たちです。
 私はオーディオとアナログとスイッチング電源が専門と云うことになっております。2ヶ月に1度、みんなで集まって勉強会や情報交換をしています。総勢は約50名くらいでしょうか?答のある質問をすれば、必ず誰かが答えてくれます。ここのメンバー達は、OPアンプのような基本的な事は皆マスターしている人達なので、上手い翻訳になっていると思います。
 私事ですが、今までで非常に参考になった本がいくつかありました。第1は中学生のときに手にした「ハムになる本」というのが電気の基礎を分かり易く書いてありましたので大変に参考になりました。これを読んで近所のラジオを直しては、お小遣いを貰ったりしていました。そういった経緯で中学3年の時にはアマチュア無線の免許を取りました。
 高校生の時は百瀬了介氏の「ハイファイアンプの設計」と、武末一馬氏の「OTLアンプの設計と製作」を熟読して真空管アンプを夢中で作っていました。幾らかの稼ぎもこの頃から得ていましたので、将来はオーディオメーカーを作る夢が芽生えていました。
 1971年頃だったと思います。ナショナルセミコンダクター社のLM301Aのデーターブックを見て大変な衝撃を受けました。この設計者こそが私が尊敬する超天才エンジニアのロバート・ワイドラー氏です。氏はフェアチャイルドのuA702やuA709の設計をした有名人です。後にナショナルセミコンダクター社に移籍して、LM301の設計をしました。この人の発明はカレントミラーバンドギャップリファレンスなどが有名です。私は1971年頃のNSのデータブックとアプリケーションブックも熟読いたしました。この時期のことが今となっては最も役に立っていると思っております。氏はリニアテクノロジーにも移籍しましたが、残念ながら事故で亡くなりました。
 カレントミラーはワイドラー氏が発明しなくとも、誰かが出来たと思います。しかし氏がバンドギャップリファレンスを発明していなければ今も存在してないだろうと私は思います。と言うのはこの回路を解析して1.2ボルトの基準電圧が出ることが分かる人は居るかもしれませんが、この回路から、温度係数が0になることを解析できる人は非常に少ないと思います。ましてやこの回路を発案するのは大変なことです。発明とはそういうもので、後から解析して分かった気になったり、改良するのとでは大違いです。
 私が翻訳を担当した部分は、高速オペアンプに使われている電流帰還に関しての部分になります。電流帰還について、大雑把に説明いたしますと、オペアンプのプラス入力はグリッドやベースかゲートになっていて、負帰還用のマイナス入力はカソードやエミッターやソースになっていると考えてもほぼ合っています。
 フィデリックス製品のLZ-12(1978年)、LB-4(1980年)、MCR-38(1990年)はいずれもが電流帰還といえます。直流アンプでありながら、電流帰還構成にしたのは非常に早かったと思います。差動型ではなく、直列型でドリフトをキャンセルするというユニークな構成だったからです。
 私は紙の本になじみがあるのと、翻訳者の特権として本を頂きましたが、皆様にも非常に喜ばしいことは、アナログデバイス社の日本のホームページから、PDF形式のものが無料でダウンロードできることです。何と12,960円分です。プリントアウトすれば、膨大な厚さになると思いますが、この本を熟読すれば、きっとオペアンプ使いの達人になれることでしょう。(2014年5月31日)

    
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