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カートリッジテストの準備 中川 伸

追記しました!clearaudioのテストレコードCA-TRS-1007を購入しましたので、分かったことを追記します。信号の配列と、イコライザカーブはJVCのと同じですが、最内周の音溝径が異なるので新たに制作されたものです。しかも± 0.5dBと記載されているので、現代技術よって、より高精度で作られたものと推察します。僅かの差が拡大されるデジタルオシロスコープによるリニア測定をしましたが、写真のように、JVCよりもさらにフラットに見えます(AT-ART7)。

 私はテストレコードのどれが正しいのかを知る術はありませんが、これらの情報から総合的に判断すれば、clearaudio製がカートリッジの特性を最もフラットに見せるように思います。また、メタルマスターは存在しているでしょうから、在庫が完売すれば再プレスは可能でしょう。余談ですがこのレコード制作に関わった創業者のPeter Suchyとは日本で2度、ドイツのオーディオショーで1度の計3度会っています。そしてヘッドアンプLN-1とパワーアンプLB-4を買ってもらい、私はPradikatとDeltaのカートリッジを買いました。一方のテストレコードAD-1は日本オーディオ協会の方に問い合わせると、現在100枚ほどの在庫があるそうですが、これも無くなればば再プレスは可能なのでテストレコードの入手に困ることはなさそうです。(2016年10月29日追記)

 カートリッジの発売に備え、今、測定系の整備をしています。先ずはどうしても必要なのがテストレコードです。昔からの有名なものは、(1)B&KのQR2009、(2)JVCのTRS-1007、(3)DENONのXL-7001〜7003(日本語ナレーション)と(4)XL-7004〜7006(英語ナレーション)などです。私は(2)と(4)とJVCの50kHzまでのTRS-1005を持っていますが、今はどれも販売されていません。今、購入出来るのは、日本オーディオ協会から発売しているAD-1で、これはDENONのXL-7004などの原盤から再プレスしたものです。他にはクリアオーディオのCA TRS-1007で、型番からしてJVCのと似ているのでしょうが、詳細は分かりません。

 スイープ信号のテストレコードはRIAAで録音すると高域レベルがオーバーになってカッターヘッドやカートリッジに負担が掛かるのでRIAAでは殆ど録音されていません。しかもDENONとJVCでは録音カーブが異なるので両対応のイコライザを設計しました。AD-1はトーンアームとの共振周波数付近も計れます。これはあくまでも測定用の回路で音質には拘っていません。低域を伸ばし過ぎるとソリや偏心で不安定になるので、敢えて極端には伸ばしていません。20Hz以下をシャープにカットするフィルターも備えています。電源の投入時はJVCのTRS-1007のポジションでないと動作するまでの時間が長く掛かり過ぎます。もしも製作するならゲインとカーブを決める部品は精度1%を目指すのが良いでしょう。

使ったソフトは無料になったMicro Cap12で、使い方はYoutubeで紹介しています。Micro Cap12

 使用電源はデリケートなMCも測定するのでスイッチング電源では大いにノイズが心配ですし、非安定電源だと電源変動で不安定になります。ですから安定化されたリニア電源でないと十分な性能が発揮されません。フィデリックスの6Wクラスの24V0.28Aは最適です。写真左下にその電源とイコライザとB&K2317用の電源(9V0.7A)が写っています。

 レコーダーはリーダーやB&Kなら測定器として定評があります。今ではPCでも記録は可能ですがサウンドカードの性能が測定器レベルに達しているどうかの疑問はあります。オーディオテクニカやDENONのカートリッジも、B&Kのペーパーでの測定のように見受けられます。

 リーダーLFR-5600とB&K2317でDL103を測ってみましたがどちらも問題無く計れています。使用レコードはXL-7004です。

 テストレコードはDENONのXL-7004とJVC-1007でFR-1mk2も測ってみました。JVCは10dB感度を下げての記録です。JVCは1kHzが1dB低く録音されています。10kHz以上が微妙に異なり、どちらが正しいのかは分かりません。しかし、カートリッジのこの帯域は持ち上がることが多いので、JVCの方が少しだけ良いデーターには見えそうです。それにしても50年前のカートリッジでこの特性は立派なものです。
 さて、カートリッジの測定としてデジタルオシロでも調べてみました。5cm/secなので全体で50secです。つまり1目盛で倍になりますので、20、40、80、160、320、640、1250、2500、5000、10000、20000として読めます。ここでのレコードはTRS-1007のバンド3(L+R)で上が左で下が右で、カートリッジはAT-ART7です。ということは、レコーダーがなければ、デジタルオシロでもおおよそのデータが記録可能です。スクラッチの影響で2箇所に髭が見られ、うねりがあるようにも見えますが、これは電圧軸がリニアスケールなのでdB表示だとかなりフラットに見えます。

 おおよそであればサウンドカードを通じてのパソコンでも表示可能です。ソフトはフリーのWaveSpectraが使えると思います。ただしPCはノイズが多く、校正された測定器でもなく、測定の設定には確かな技術も必要なので、得られたデータの取り扱いには十分にご注意してください。
 話はそれますが多くのスピーカーは低音が落ちています。1992年の事ですが、私がMFBを掛けることによって20Hzから上をフラットにしました(特許3215929号)。さぞかし良くなると思いきや、過度特性は非常に良くなるものの、多くのソースで低音はオーバーに聴こえます。つまり理想的なオーディオ装置が出来上がってからちゃんと聴こえるように録音しているのではなく、その時代の多くのスピーカーで良く聴こえるように調節されているのです。
 似たことはカートリッジについても言え、多くのカートリッジは、高域にピークができます。このピークは、ある時期まではレコードのコンプライアンスと針先の等価質量による共振だと考えられていました。1970年頃だったでしょうか、どこかのメーカーがそうではなくてカンチレバーの棒共振だと詳細に説明しました。それによってカンチレバーを短くしたり、音速の速い材料が使われたり、高域のピーク周波数を上げたりするようになりました。
 これらについても私見ですが、MFBと同様で、高域のピークはある程度あってちょうど良く聴こえるようにレコードは作られていると実は思っております。個人的にはFR-1mk2位の上がり方が好きです。時代によって録音も異なるので、色んなレコードを聴き、色んなカートリッジを計って、それらをも参考にしてカートリッジは作り込みたいと思っております。アナログブームらしくて小倉宝石自体がかなり遅れています。(2016年9月30日)

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