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クロックのジッターの測定方法 中川 伸

  クロックのジッターが極めて少なければ理論的には下図の真ん中のような線になりますが、現実にはおおむね下図の左右に開いた形でノイズレベルも上がります。

  しかしこれを精度よく測定するのはかなり大変です。それは10MHz以上という高い周波数のすぐ近傍を精密に測定しなくてはならないからです。分かり易く例えますと、体重100kgの人が0.1gから100gの重りを持ったとして、その差を精密に計測する様なものです。でも、1000万円から2000万円ほどかけるとこれが測定でき、それはCNデータという下図のような形で表せますが、これは上の図で広がったスカートの右側の形と強い相関を持ちます。

  クロックのジッターが減れば高性能なDAコンバータが作れる可能性が高まります。でも、もう少し簡単で、より直接的に計る方法があります。それは出来上がったDAコンバーターに特別な低周波信号を入れ、それを解析することでクロックのジッターを推察するという方法です。下図の3つはCAPRICEのクロックのみを交換したデータで、クロックのジッターによる性能差がよく現れています。一番上は、私の聴覚とジッター理論と経験を元に追求した最終CAPRICEのグラフです。その下は一般市販のCMOSの水晶発振器に入れ替えたものですが、ほぼ世間の標準と見なして良いでしょう。一番下は、たまたまジャンク屋で見つけたもので、聴くやいなたこれは駄目だと思ったものです。

 この測定原理の詳しい論文はこのサイトに載っています。大雑把に解説をしますと、サンプリング周波数44.1kHzの4分の1の周波数にあたる11.025kHzでフルスケールの-6dBの信号を入れます。なぜこの周波数かというとビートが起きないからです。さらにこの周波数の48分の1の229.6875Hzの方形波を16bitの1LSBだけを加算して入れると、その奇数次の高調波スペクトルがたくさん出てきます。この高調波レベルは目印のような役目をします。しかし、24bit信号の場合は1LSBを入れても、DAコンバータのノイズに隠れ殆ど測定できないレベルの高調波になります。参考までにその16bitのwavファイルはzip形式でダウンロードできるようにしました。これは解凍してCDに焼くことができます。
 さて、フルスケールの-6dBの信号を一般的な2Vrms出力のDAコンバータに入れると、約1Vrmsの出力となり、そのスペクトルのスカートの広がり方で発振器が持つ1/fノイズや、水平部分で中域のノイズを推察することができます。つまり、クロック単体のCNはDAコンバータに使う一部の素材の質を表し、この11.025kHzのスペクトルはDAコンバーターを含めたの仕上がりの質を表すといえます。
 でも、-6dBの信号でCAPRICEを計ると、出力が大きめなので、一般の人は比較に困ります。そこでSN的には不利なのですが、比較し易いよう同じ1Vrms出力で測っています。それでもSNが良いので、そのハンディーは全く現れていません。むしろフォルテでのヘッドルームが高まっているといえます。また、229.6875Hの方形波を入れると一般の人にはその意味が分かりにくいので、これも入れてはいません。
 ネットで検索するとオーディオ雑誌で各機種ごとのMeasurements のページに計測例が出てきます。すると著名な超高額製品をも負かす、世界最高水準であることがお分かり頂けると思います。ではどうしてこのような超低ジッターが実現できたかについてですが、まずは発振器を構成するアンプの入力に、CMOSではなく、1/fノイズが非常に少ないバイポーラトランジスタを使ったことが第一。それから特許出願中の回路構成にしたことが第二。そして水晶メーカーの立場からすればイエローカードを出すか出さないかの瀬戸際にて動作をさせていることが第三です。普通に96MHzの発振器を設計すれば、こんな性能はなかなか出せないと思います。つまり周波数精度よりもCNで、それよりも11.025kHzのスペクトルの方が大切だということです。とにかくクロックのジッターが減ると、SN感が良くなって、細やかな優しいニュアンスまでもが出るようになり、解像度が増すと同時に、空間が広がることは、ほぼ確かです。(2010年10月5日)

        
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