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無料の回路シミュレーションソフトとイコライザー回路への使用例 中川 伸

 私はCQ出版が主催する電子回路技術研究会の会員で、会員の中にはトランジスタ技術などの執筆者たちも多く在籍しています。そして2ヶ月毎に会合を開き、研究会や情報交換などを行っています。ここの会員の皆さんたちは以下の3種類のうちのどれかのシミュレーションソフトを使っている人が多いようですが、日本語の解説本が出ていることも大きな要因でしょう。ソフトはまだ他にもありますが、詳しくはトランジスタ技術2003年7月号265Pの黒田徹氏の記事をご覧になってください。ところで評価版には全機能があっても一定の日数が経過すると働かなくなってしまうものと、機能が限定されてはいるものの使用期日に期限がない2種類が多いのですが、私は前者の物は好きではありませんので、以下に紹介するものはすべて後者のタイプです。
★Micro-Cap9 DEMOは http://www.toyo.co.jp/micro-cap/index.html  からダウンロードでき、解説本は「Micro-Cap7/CQ版」 定価15,750円(本体15,000円)です。
ダウンロードしてあった少し古い参考資料です。東陽テクニカ様のご好意による貴重な再アップですが、質問は不可だそうです。
★OrCAD R10.5 デモ版は http://www.cybernet.co.jp/orcad/download/demo.shtml  からダウンロードでき、解説本は電子回路シミュレータPSpice入門編 定価1,890円(税込)と電子回路シミュレータSPICE実践編 定価2,940円(税込)です。
★SIMetrix/SIMPLIS Introは http://www.intsoft.co.jp/catena/intro.htm  からダウンロードでき、解説本はSIMetrix/SIMPLIS スペシャルパック価格15,750円(税込)です。

        

 私はMicro-Cap8 DEMOを主に使っていますが、Micro-CapV/CQ版の頃から、とにかく慣れていることが第一の理由で、第二の理由は図面がきれいだということです。厳密にいえば、それぞれに特徴があって最近ではSIMetrix/SIMPLISが人気上昇中ですが、機能の範囲内で正しく使う限り、当然ながらどれもほぼ同じ結果となります。私はMicro-Cap8のDEMO版で実は不足したことがまだありません。 すべてのシミュレーションはそれなりに結果は出ますが、それが正しい結果かどうかを見極めることこそが最も大切です。そのためにはシミュレーションを行う前に結果を予測し、シミュレーション結果と照合することになりますから、回路の動作をよく理解した上で用いることが大切です。 さてここではフォノイコライザーをシミュレーションしてみましょう。まずはイコライザーカーブですが、SP用の標準(3180μSと318μS)とLP用の標準であるRIAA(3180μSと318μSと75μS)があります。これらのカーブをエクセルで精密に計算した結果は次表の通りです。

Freq(Hz)  SP(dB)  LP(dB)   Freq(Hz)  SP(dB)   LP(dB)
    20   18.40  19.27     1500   −0.51  −1.40
    30   17.72  18.59     2000   −0.70  −2.59
    40   16.92  17.79     3000   −0.84  −4.74
    50   16.08  16.95     4000   −0.89  −6.61
    60   15.23  16.10     5000   −0.92  −8.21
    70   14.42  15.28     6000   −0.93  −9.60
    80   13.64  14.51     7000   −0.94 −10.82
   100   12.23  13.09     8000   −0.94 −11.89
   125   10.71  11.56     9000   −0.95 −12.86
   150    9.42  10.27    10000   −0.95 −13.73
   200    7.39   8.22    11000   −0.95 −14.53
   250    5.87   6.68    12000   −0.95 −15.26
   300    4.70   5.48    13000   −0.95 −15.94
   400    3.06   3.78    14000   −0.95 −16.57
   500    2.01   2.65    15000   −0.96 −17.16
   600    1.30   1.84    16000   −0.96 −17.71
   700    0.81   1.23    17000   −0.96 −18.23
   800    0.46   0.75    18000   −0.96 −18.72
   900    0.20   0.35    19000   −0.96 −19.18
  1000    0.00   0.00    20000   −0.96 −19.62

 この精密な値に対し、E24系列で実用的な精度を持つ、逆特性のカーブを作り、これと組み合わせてフラットになるかどうかをシミュレーションで見てみました。実際にこれらの逆特性のカーブは私が使っている歪率計(サウンド・テクノロジー社の1700A)と組み合わせて使うと、とても具合が良いのです。というのはOUTPUT LEVELを最大にすると出力インピーダンスが0Ω近くになって実用上は十分な逆特性となるからです。

                       OUT2のRIAA偏差

 回路ですが、普通はそれぞれ上の回路です。これは良い音のためには出力のカップリングコンデンサにスチロールとかマイカとかプリプロピレンなどの特性の良いものを使わなくてはなりません。しかし下の回路のようにすることで、カップリングコンデンサはフィードバックループ内に入るので、コンデンサの音質差は縮小されながら下駄を履かされてグレードアップします(試聴実験してみました)。さらにイコライザ回路を下図の形にし、下図の定数にすることでさらに音質の向上が可能です(これも試聴実験済みです)。理由は高域の音質を決める重要なRIAAカーブ用のコンデンサが、直列に2個通過する回路から1個通過するだけの回路に変わるからです。下の回路ではうんと高域は殆どがこの1個のコンデンサのみを通過します。しかし上の回路では2個のコンデンサを通過するため、2個とも良質なものにしなくてはならないからです。オーディオはこのように些細なことを積み上げて音質を向上させることも重要です。

 この図でスイッチを閉じるとLPのRIAAで、開くと標準のSPのカーブになります。入力にある820Ωと100pFはMCカートリッジを直接に接続すると発振する場合がありますので、この防止用です。この防止回路は信号源と直列に抵抗が入らないのでSN比が悪くならない構成になっています。偏差は±0.1dB程度と非常に良好です。私ならOPアンプ部はオールFETのディスクリートにするところですが、JFET入力のOPアンプで簡単に作っても良いでしょう。先ずはLF356あたりをスタートに好きなICを探すのも楽しいでしょう
 電源は、扱いが面倒ですが音質的には12Vの鉛バッテリーとバイパスコンデンサを4本ずつ使用し、オフ時に充電しておいてオン時に充電器を切り離すのが最も無難でしょう。そこらへんにあるスイッチング電源を使用すれば努力がぶち壊しになります。商用トランスの電源を使用したとしても3端子レギュレーターは音質的に推奨できません。実は画期的な電源回路ができたのですが、まだ公表できませんので、以下のようなトランジスタ1石の回路を4回路使ってステレオにしてみてはいかがでしょうか?

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